2020年度から、小学校においても英語が必修科目となったことをキッカケに、ますます英語教育に対する関心が高まっています。
ご両親の中にも、我が子が将来的にバイリンガルやトリリンガルと言った多言語話者になり、グローバルで活躍する人材になって欲しいと考える方が多いでしょう。
しかし、そのような思いとは裏腹に、多言語で会話する事のメリットやデメリット、発育に関する影響などを理解して教育している親は少ないのではないでしょうか。
そこで、筆者も小学校時代をまるまる米国で過ごした経験や2児の父として、どのように英語教育と向き合っているのかを踏まえ、本記事で疑問や不安を払拭します。
以下の方向けに記事をお読みいただくことをおすすめします。
こんな人におすすめ
✓これから子どもに多言語を身につけさせたい方
✓多言語を身に着ける為の最適な学習方法を知りたい方
✓日本語と他言語の両立に悩まれている方
それでは、早速見てみましょう。
多言語習得の魅力
はじめに、多言語とは何なのか一般的な定義をもとに解説致します。
これらの情報を理解する事で、多言語習得の意義や必要性を見つめなおすキッカケになります。実際のところあまり理解できていないという方は、チェックしておきましょう。
バイリンガルとトリリンガルの違い
大きな違いは、言語の扱える数に違いがあるということです。
バイリンガルとは、二言語を母語のように話すことができる人のことを指し、トリリンガルは三言語を話すことができる人のことを指します。こういった複数の言語を習得した人のことを、マルチリンガルと言います。
四言語を扱える人は、クアドリンガルと言い、言語数が増えていくと呼び名が変わっていきます。
多言語話者のメリット
マルチリンガルのメリットとしては、留学や海外での仕事、ワーキングホリデーなど、幅広い活動が可能になるということです。
理由は、異なる文化圏の人々とコミュニケーションをスムーズにできることから、国際的な交流や仕事において優れたパフォーマンスが期待できます。さらに、多言語習得を通じて、異文化の理解も深まり、結果的に幅広い活動の後押しとなります。
実際、私も英語が話せたおかげで、前職において比較的早い段階で海外駐在を経験させていただきました。また、中国語習得においてもバイリンガルであったおかげで、非常に助けられました。
中国語の場合、文法構造が英語と似ているので、単語とピンインさえ覚えてしまえばある程度会話できるレベルになります。(日本語は、言語の中でも複雑な文法構造を持っている言語のひとつとされています。)
このように、マルチリンガルになるメリットとしては、仕事や学業面における可能性の拡大や新たな言語習得を容易にする効果が期待できます。
バイリンガル育成:子どもに適した環境と教育法
次に、子どものバイリンガル育成に向けた環境作りや教育機関の取り組み、親が大切にすべき育成方針について説明します。
日本で暮らしていると、どうしても日本語に囲まれた生活を送ることになるので、子どもたちが自然に学ぶ環境作りと楽しく学習できる仕組みを作ってあげる事が非常に重要です。
発育段階において、誤った学習を強いると英語だけでなく日本語にも支障が出てきます。従って、バイリンガル育成をする上では学校での教育に限らず、家庭でのサポートも意識するようにしましょう。
次章の情報を活用して、子どもたちがバイリンガルとして成長できる基盤を築いていきましょう。
幼少期のバイリンガル環境作り
バイリンガル育成において何よりも大切な事は、習わせたい言語の接点を増やすことです。
前述の通り、幼少期は言語を司る脳が一番成長する時期にあたります。ここで単一言語のみ学習してしまうと、その後英語や他言語を学ぶ際母国語を起点に言語を学ぼうとしてしまうからです。
家庭におけるバイリンガル教育には、英語の絵本や英語のテレビ番組が効果的です。一方、オンライン英会話や家庭教師をつけて勉強させることは、個人的にはオススメしません。まずは、英語圏の文化が身近にある事が当たり前という環境を作ることに専念しましょう。
要するに、幼少期の英語教育には、楽しく学べる環境を作り出すことが重要です。
英語の絵本や英語のテレビ番組を活用し、子どもが興味を持ちやすい環境をそれとなく作り出すことが非常に大切です。
また、時間を守れる年齢の子であれば英会話アプリを活用するのも手です。
下記の記事に子ども向けのオススメ英会話アプリをまとめているので、こちらも活用してください。
小学校での多言語教育の取り組み
小学校においては、2020年度より小学校3年生以上を対象に英語が必修科目となりました。教員とALT(外国語指導助手)が連携し、児童に適切な指導を行っています。
背景にグローバル化が加速する世界において、英語教育をはじめ、外国語やコミュニケーション能力の育成がより重視されるようになったからです。
ここで、幼少期から英語に触れさせていることが非常に重要となってきます。
普通の小学校に通わせると3年生から、英語学習を必然的に学ぶ環境に身を置くことになるので、この時に英語に慣れているか否かでは天地の差となるでしょう。
3年生になって初めて英語に触れるという子は、おおよその言語脳が日本語で形成されてしまっている状態です。
そこに英語学習を突如取り入れても「自分には合っていない、やめよう」という考えに陥りがちになります。一方、英語が喋れないにしても幼少期から英語に触れている子は、英語脳の基盤もできているので学習の質が高まりやすいです。
このように、家庭での英語教育のみならず学校教育を活用して子どもの外国語に関する知的好奇心を引き出してあげるようにしましょう。
親が大切にすべきバイリンガル教育方針
子どもをバイリンガルにするためには、発育に合わせた無理のない教育をするように心がけましょう。
幼少期の子どもは感情のコントロールがうまくできません。それを無理に親のエゴで押し付けても学ぼうとしませんし、却って興味を失ってしまう可能性があるからです。
繰り返しになりますが、親が大切にすべきは子どもが自然に英語と日本語を楽しみながら習得できる環境を整えてあげることです。
最初は、短い時間で構いませんので英語の絵本を読み聞かせることや、テレビで流すのは英語のアニメ等で英語が耳に残るようにしてください。
その上で可能であれば、英会話でコミュニケーションも取ってみましょう。
筆者は小学生時代、午前8時半から午後3時まで現地校に行き、帰宅後の午後3時半から4時半まで英語の家庭教師を付けられ、英語漬けの生活を送っていました。親は良かれと思ってやってくれていたということは、今では理解できます。しかし、当時は嫌で嫌でたまらなかったのが正直な気持ちでした(笑)。
それを続けていたので、一つ下の弟とは英語でしか喋らず、「家では日本語を喋れ」という理不尽な教育に戸惑ったのを覚えています。(帰国後、周りからは日本語がおかしいと言われていました。)
何が言いたいかというと、子どもの発育に合わせて教育方法を選ぶことが重要です。
その上で、親自身も外国語に興味を持ちます。共に学ぶ姿勢を見せることで、子どもの言語習得への意欲を高めることを大切にして欲しいです。
二言語を話すことがもたらす恩恵
バイリンガルって、どちらの言語も中途半端になってしまうから発育的に大丈夫なのかと悩まれている方もいると思います。
この章では、バイリンガル教育によるバイリンガル脳が与える影響や想定される課題について詳しく解説いたします。
何度もお伝えしている通り、発育過程において言語教育はバランスが大切です。これらが過度にどちらかに偏ると、母国語ばかり喋ってしまうことになったり、母国語が疎かになってしまう可能性があります。
早速見ていきましょう。
脳への影響
研究によると、バイリンガルである子どもたちの脳は、モノリンガルの子どもたちと比較して、脳のある部分が発達していることが分かりました。
具体的には、思考や意識に関連する前頭前野と、音声や言語理解に関係するブローカ野が活性化されているからです。
前者は、様々な言語を聞いてどの引き出しを開けるべきか判断し、後者は音声や発音を拾ってそれに合った文法構築や発音を発声する役割があります。
この部分が発達しているからこそ、言語の使い分けがスムーズにできるのです。
加えて、近年の研究報告ではIQが高かったり、マルチタスクをこなすことが容易になるといった報告もあるようです。
バイリンガルと読み書きの関係
バイリンガル教育をする中で気になるのが、読み書きは母国語と他言語どれくらいの比重でさせるべきなのかという疑問です。
こちらについては、メリハリをつけた教育法が大切になってきます。
例えば、家では日本語、外では英語。読むのは英語、書くのは日本語と切り替えるタイミングを明確にしてあげることが重要です。
幼少期は、なかなか自分の頭で物事を判断することがままならないため、意識的に大人や教育者は時間や場所で区切って取り組んであげましょう。
私の場合は、平日の夜子どもと過ごす2時間は英語で話したり、本を読んであげます。週末は逆に日本語で話しかけたり、日本語の絵本を読んであげるようにしています。
繰り返しになりますが、子どもが小さい内は読む=他言語、書く=母国語として、それを1週間ごとに変えてあげる等、子どもの状態を見ながらバランスよく触れてもらうようにしましょう。
バイリンガルが抱える課題と解決策
バイリンガルの子どもたちは、英語や日本語など二つの言語を習得し、国際的な環境で活躍する機会が多くあります。しかし、それらを育成する教育や子育てには課題が存在します。
一つ目が、母語と第二言語のバランスを保つことです。どちらかに偏重してしまうと、一方の言語が疎かになることがあります。
解決策として、学校や家庭で言語環境を整え、両方の言語を使う機会を提供することが重要です。
また、異なる文化や社会の理解が必要となるため、子どもたちに多文化理解の機会を与えてあげることが非常に大切です。日本人と白人、黒人は肌の色や目鼻立ちも違うのです。
子どもたちは、そういった部分も敏感に感じ取るので、自分自身や他者との違いを理解できるよう育成することが求められます。
最適な言語学習ツールを見つけよう
本章においては、バイリンガル教育に最適な言語学習ツールや書籍、ウェブサイトを紹介いたします。
特に小さい子ども向けにどういった教材が良いのかという部分に焦点を当てて、インプットやアウトプットの方法をお伝えします。
ぜひ、色々と試してみて、ご自身の子どもが楽しく言語学習できる環境を作りましょう。
おすすめの書籍
年齢に応じて、おすすめの書籍を紹介します。
お子さまの年齢に照らし合わせて、書店で中身を見て合うものを選びましょう。
〇『親子で楽しむマザーグース』(対象年齢 0~1歳)
〇『エリック・カールの英語がいっぱい』(対象年齢1~3歳)
〇『英語でも読めるはらぺこあおむし』(対象年齢3~5歳)
〇『Apple bear cat』(対象年齢3~5歳)
〇『かいじゅうたちのいるところ』(対象年齢3~5歳)
まずは、英語や他言語に興味を持ってもらう事から始めるのであれば、絵本はうってつけです。
寝る前の読み聞かせやCDがついているものもあるので、自然と耳に入るように工夫しましょう。
英語学習に役立つ人気サイトやアプリ
書籍だけではなかなか興味を持ってくれず困っている親御さんもいるかもしれません。
YouTubeなどを見せて別のものに興味を持ってしまうのも心配だと思いますよね。
『BBC Learning English』や『TED Talks』は無料で視聴できるアニメーションが豊富にそろっています。
ただし、少しマニアックだったり内容が幼稚園の高学年や小学校1~2年生向けに作られているものがあるので、気軽に見るというよりも英語をある程度慣れ親しんだ子どもが見るのに最適です。
大人向けの勉強方法で過去に『BBC Learning English』や『Ted Talks』の記事を執筆したので、ぜひこちらも参照ください。
また、もう少し気軽に見るのであればディズニーが私的にはオススメです。
レンタル料や購入する場合は費用が発生しますが、子どもが遊んでいる時に流すと効果抜群です。個人的には、以下作品が聞き取りしやすく、小さなお子様も興味を持って見てくれるのかなと思います。
〇『ライオンキング』
〇『トイ・ストーリー』
〇『ファインディング・ニモ』
上記で紹介したのは、幼稚園の高学年や小学校向けの内容になりますので、まだ試してないなと言う方は一度使ってみてください。
効果的なアウトプット方法
最終的には、バイリンガルを目指すのであれば会話ができなければ意味がありません。
自ら発声することこそが、言語取得する上で必須ですが、自分自身がそもそも英語や他言語を喋ることができないという場合のアウトプット方法をこちらで紹介します。
無料で英語を話す環境を作るのであれば、両親が外人の方と友人になることや無料の英語クラブやサークルに入会する必要があります。
この場合ですと、住んでいる所によっては、難しい場合もあります。
かといって、小さい子どもは意識して英語の日記を書いたり、独り言を言ったりすることもできません。
その場合は、どうしても有料のサービスを使う必要が出てきます。
子どもが興味を持ってやってくれるか不安だという方は、サブスクで比較的料金も安い英会話アプリを活用してみてはいかがでしょう。
スマホ貸してと言われるのであれば、英会話アプリを通じてアウトプットさせてあげる方法もオススメですよ。
また、高額にはなってしまいますがプレスクールやインターナショナルスクールに通わせるという手もあります。その場合は、外では英語・家では日本語と区別をつけてあげることが重要です。
要は、子どものライフスタイルや趣向を理解してあげることで、最適なアウトプット環境を生み出すことが、親が一番気にすべきところになります。
色々と試行錯誤を繰り返し、子どもが楽しいと思えるアウトプットを探してみてください。
まとめ
世の流れもあり、少なからず、現在の子どもたちは我々が過ごした幼少期と比べてはるかに母国語以外を身につける事を必要とされている世代です。
だからといって、親があれもこれもと押し付けて、言語を覚えさせようとしても上手くはいきません。
最初は、気負うことなく英語や他言語に触れる環境をそっと作ってあげましょう。その中で、たくさん褒めてあげてください。
小さい子どもは、自己肯定感がまだまだ身に着いていないので親が応援してあげる事が自信につながり、意欲に繋がります。
親のサポートあってこそのバイリンガル教育だと思いますので、隣の芝生が青く見えても惑わされず、お子様に向かい合っていきましょう。